悲しいけど悲しいだけじゃない、優しいけど優しいだけじゃない。
そんなアニメだったのかなぁと、思います。
心が安らぐと言うか、見ていて優しい気持ちになれるアニメの中では5本指に入れられます。いや、そんなにアニメ見てませんが。後安らぐアニメはARIAとかARIAとか…あれ?
壁に囲まれたグリの街で、天使でも人間でもない『灰羽』と呼ばれる彼女たちの小さな話。本当に小さな話。誰かの感情が世界を動かすわけでもなければ、死ぬ事も生きる事も仲間たちで分け合うだけの、そういう意味ではファンタジーでもSFでもない何気ない日常を描いたアニメ、でしょうか。
私がこの作品を知ったのは…多分野田順子さんがレキ役をしていたから(チーン)
(某所で『1話みれるよー試聴にはいいんでね?』って書き込みを見て興味を持ったのがきっかけだと思います)
それで随分前に1話を見てそのままだったのですが、最近ふと『あ、灰羽連盟見たいな…』と思ってビデオをレンタルしてきました。
この作品のどこに惹かれたかといったら、やっぱり世界観です。
壁に囲まれた街。自分が誰なのか、どうして灰羽として生まれてきたのかもわからない。誰も知らない壁の外の世界。
穏やかだけどどこか閉鎖的な世界って素敵なんだよなぁ。なかなかないですよね。
と言うわけでグダグダと感想を書いていきたいと思います。13話分なので超絶に長い。
1話「繭・空を落ちる夢・オールドホーム」
第1話で一番印象に残ったのはやっぱりラッカの羽の生えるシーン…もなんですが、朝、ラッカの羽の血をレキがきれいに落とすシーンでした。
あの羽を梳かす音が好きです。ちょっとコアですが。それから羽が生えるのは本当はものすごく痛いのに、レキが羽が生えるとき「チクッとする」って言ったことが印象に残ってたり。本当に小さいことなんだけど、1話のレキは子供をなだめるお母さんみたいに優しくて好きです。
そのくせタバコも吸うし原付にも乗るしにんじん嫌いだし…うーん、素敵だ(・∀・)
ヒカリがラッカに光輪を授けるシーン(あんな鉄板みたいなのから光輪を取り出したものだから…)も衝撃でしたが。
2話「街と壁・トーガ・灰羽連盟」
2話でようやくラッカは越えることの許されない壁のことを知ります。灰羽って存在がまるで当たり前のように人間と共存してる、私たちの世界ではありえないことが当たり前に描かれてる世界って素敵。「灰羽は人間の使い終わったものを使う」ってのもなんだかいいです。
街の人が優しい。服屋のおっさん(・∀・)イイ!人。未整理未洗濯には笑わせていただきましたw
ラストのラッカとレキの「ラッカが寝たら寝るよ」「もう寝たよ」は反則。ラッカ可愛すぎる…。
3話と4話5話はヒカリ、カナ、ネム、それぞれの仕事場でラッカが仕事を手伝いに行くお話。ヒカリが光輪の鋳型で行ったおそろしい行為(笑)のせいでラッカの髪がハネたり、カナの仕事場のオヤジがいい人だったり、ネムと世界の始まりの物語を考えたり、心温まるお話だった…!
6話「夏の終わり・雨・喪失」
7話「傷跡・病・冬の到来」
そんなまったりほのぼのなストーリーに転機が訪れるのがここ、6話。クゥの巣立ちの話。
どうして巣立っていくのかわからない。けれど、時が来た灰羽はある日ふっといなくなり壁を越える。そんな巣立ちの日がクゥに訪れる。
クゥは一番小さくてまだまだ子供でたくさん背伸びをして。そんな子供っぽい子供だったけど、誰よりも自分を知っていて、心は誰よりも大人だったんですね。
彼女の「ラッカも私に雫をくれたんだよ」ってセリフのなんて暖かいこと…(ノД`)コレは矢島晶子さん好演です。クレヨンしんちゃんと同じ人とは思えん
心に深く刻まれたクゥの巣立ちは、やがてラッカに「病」となって襲い掛かります。
病とくくっていいのかはわかりませんが、ラッカの羽が黒く痛んでいく。自分が病に侵されていくことに怯えて自らの羽をはさみで切るラッカは、痛々しくて本当に見てられない…。病の事を誰にも相談できないラッカだったけれど、レキだけがラッカの羽の異変に気づきます。
ラッカに突然降りかかる「罪憑き」という存在。そしてレキは自分が罪憑きであることを話します。
私も6、7話を見るまで、本当にオールドホームは楽園のような場所だと思ってました。大切な人たちと離れることなく穏やかに暮らせる場所だと。
こんなにも一生懸命に生きているのに、巣立ちの時や罪憑きと呼ばれる存在が容赦なく彼女らを傷つける。けれどそこから逃げ出すことは出来ない。灰羽を守るために存在するはずの壁が、レキにとってはただの牢獄だった。
どうして「祝福された灰羽」と「祝福されなかった灰羽」が生まれるのだろう、なんて思ったりもしましたが、後々の真の名前の話で何となくわかったような。でも本当の答えなんて誰も知らないんですけどね。
8話「鳥」
9話「井戸・再生・謎掛け」
サブタイトルが唯一ひとつの言葉だけの第8話。鳥という存在がこのストーリーに大きく影響している事を示しているんでしょうか。物語の大きな山場ですね、8話。
罪憑き、クゥの巣立ち…悲しみから抜け出す事の出来ないラッカ。私はてっきりレキがラッカを抱きしめて「私がラッカを守る」って言ったことで悲しみを断ち切ることが出来るくらいのノリだと思ってました。けどラッカは相変わらず鬱鬱鬱…。感情の描写を素直にあらわしてるんだなぁと思いました。ラッカがネガティブすぎて私まで憂鬱になりましたがorz
鳥は唯一壁を越える事を許された生き物。ラッカはそんな鳥に誘われて西の森の井戸に落ちる。
ここちょっとよくわかりませんでした。真っ暗闇の真ん中で揺らめく水?とかドアの閉まる音…まったく何なのかわかりませんでした…。でもラッカの灰羽になる前の記憶なんでしょうか?そもそも灰羽になる前って何?この回は何回か見ただけではわからないです…。いや、何回見てもわからないのか?
井戸から助けられたラッカと話師との会話。「罪を知る者に罪はない、では汝は罪びとなりや」罪の輪と言う謎掛け。鳥の助けによって失った繭の中の夢を取り戻し、罪憑きから開放されるラッカ。
白くなった羽、「羽が軽くなったみたい」「ありがとう、レキ」。そんな風に喜ぶラッカを見て、複雑な思いを抱くレキ。どちらの感情も知ってる視聴者の私からすれば「ラッカ早くレキの心の闇に気づいてあげて~」と必死でしたw
ここまでがラッカの葛藤ならば、ここからはレキの葛藤ですね。
10話「クラモリ・廃工場の灰羽達・ラッカの仕事」
正直、一人で部屋にいるときのレキは恐すぎる。
レキの過去のお話。
レキの生まれるシーンは恐かった。1話でラッカが皆に見守られながら繭から生まれ、レキに支えられて羽の生える痛みを乗り越える。レキは誰に見守られる事なく生まれ、その暗い部屋の中で一人で羽の生える痛みに苦しんだ…。血で真っ赤に染まった羽で横たわるレキを見てぞっとしました。
クラモリ、ネムとの話もよかった。手を繋いで眠る二人を見るとなんだか顔が緩みます。
11話「別離・心の闇・かけがえのないもの」
12話「鈴の実・過ぎ越しの祭・融和」
話師に「罪憑きのまま巣立ちのときを迎えられなかった灰羽がどうなるか」を聞かされたラッカ。そんな灰羽は光輪も羽も失い、人間とも灰羽ともつかない存在になり人々に忘れられてしまうという。というか話師予想以上に喋る喋るw
と思ったら、どうやら話師や連盟の人たちはその「罪憑きのまま巣立ちのときを迎えられなかった灰羽」のよう…明確な答えは出てませんが、空っぽの羽袋みたいなののアップとかから見る感じ、多分そんな気がします。だから話師もレキに無事巣立って欲しいのね…(´;ω;`)ウッ
そうして話師から、仕事から、レキの昔の話なんかから、ようやくレキの優しさ、今まで自分がどれだけレキに守られてきたかに気づくラッカ。そうして「今度は私がレキを助けたい」と。そうそう、これです、ラッカやっと気づいたよー。・゚・(ノД`)って感じです。
廃工場の子達と協力してレキを助けようとするラッカ。けれど、どんなにみんながレキのことを大切に思おうと誰にも心を開こうとしないレキ。
ヒョコの花火は…不器用だけどいいなぁ、こういうの。鈴の実の話、感動的です。
13話「レキの世界・祈り・終章」
ずっと助けてほしかった。「助けて」が言えなかった。誰かが助けてくれるのを待っていた。
あまり関係ないですがサブタイトルの「レキの世界」って言葉、好きです。
最後の日が近づくレキを助けようとするラッカ。レキの絵の部屋…恐かったです。本当に恐い。レキは優しいか恐いかどっちかだなぁ…本当に。灰羽連盟から渡されたレキの本当の名前は「引き裂かれたる者の意を表して轢」というもの。
「ラッカじゃなくてもよかった」
「自分が救われればそれでよかった」
生まれてくる灰羽に懸けていたというレキ。周りに優しくする事でいい灰羽になり、救われるのではないかと考えたレキ。そんなレキの言葉にラッカは思わず部屋を飛び出す。そこで見つけたのがレキの日記。
灰羽を見て初めてうるっと来たのがこのシーンでした。初めてラッカの繭を見つけたとき、どれだけレキが喜んだのか。どれだけレキがみんなのことを好きだったか。どれだけレキがラッカを大切に思っていたのか。
罪憑きでなくなるために必要な救いは「ラッカに優しくする事でいい灰羽となり得られる救い」じゃなくて「レキがラッカを信じる事が出来る=拒絶を恐れずに『助けて』と言えることで得られる救い」だったんじゃないかなーとか。レキのラッカに託した最後の希望ってのもそれだったんじゃないんでしょーか。
レキの偽りの優しさがいつか心からの優しさに変わった、それに気づいたからラッカはレキを救いたいと思えることができた。
レキは今までずっと言えなかった「助けて」の一言を言う事ができた。だからレキは救われた…。
私のおつむではコレが限界でしたorz
レキの巣立ちのシーンは本当に。・゚・(ノД`)・゚・。
もう会えないのかと思うとこっちまでさびしくなってきた…。今までどんなに苦しんでも祝福を受けられなかったレキがようやく受けることのできた祝福。それは巣立ちの時でもあって、ラッカやみんなと過ごした思い出のことでもあるんでしょうかねーなんて。うは(*´Д`)
灰羽が巣立つとき踏み石となる古い階段がある。
『礫』とは、その踏み石であり、弱者の導き手となるものである。
話師の言葉です。
レキ、本当に優しい人でした。お別れは悲しいけどレキが巣立てて本当に嬉しい私が。・゚・(ノД`)・゚・。うおおお
DVDBOXでないかな!人間欲が出るのは恐ろしいです。ですが普通にDVD買うお金ない…BOXでたら確実に買います。
灰羽死者説とか罪憑き自殺者説とかいろいろありますが、すべてにおいて「わからない」まま終わらせたスタッフに感謝。壁の謎、灰羽の謎。わかったらなんだかつまらないですもん…。なんだかコレって死後の世界みたいですよね。人が死んだらどうなるのかは、死んでみなきゃわからないっていうか。
不思議な世界観の中で綺麗に話がまとまってて、すごくクオリティ高い作品だと思います。
こんな感想…?というかむしろレビゥ?ですが、読んで灰羽連盟に興味持っていただけたら、この作品(・∀・)イイ!と思ったわたしとしては幸いです。
最後に。レキも大好きですがクゥが一番好きです。二人とも巣立っちまったがな(´・ω・`)
いや、ヒカリも好き…光輪の鋳型でパン作っちゃうところが好き。パン屋で働いてるくせに食パンひとつ焼けないところとか可愛すぎる(*´∀`)
灰羽連盟DVD 全5巻